【着物と過ごすお家時間 6】断捨離注意 2

着物がお手元にある理由

今の大変な時期を少しでも優しい気持ちで過ごせますように、着物を通じて笑顔になれるきっかけになれば…そんな気持ちで書いております【お家時間】の記事。今回で6回目になります。【1~4】は着物と過ごす時間とその中で管理のため虫干しのお話をさせて頂きました。【5】からは整理整頓をしていく中で大事なものまで処分してしまう事を避けて欲しいので、断捨離注意報という形で記事を書かせて頂いてます。今回の記事も断捨離注意2、着物を仕分けるポイントについて参考になればと思う事です。

 

ただそこにある、ではなくて想いがあるから 着物がある

着物はお持ちだけどなかなか着る事がなかった方、着物がよくわからない。あまりなじみがなかった方にとっては基本的に着物を残す事がご負担かもしれません。うーん、書いててさみしい。でも全然着ない方にとってはそうかもしれないです。

でも着物がもつ本当の意味みたいなものってご家族の愛。だと思っています。想う気持ちがあるからこそ今、お手元に着物があるわけですよね。大事に思っているからこそ着物を嫁入りに持たせてくれてるんですもの。ほかにもおじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、叔父様叔母様から頂いた着物をお持ちでしたら、ご家族と親族のつながりが着物という身に着けることができるものとして受け継がれているわけですよね。愛情と血のつながりを身にまとうことができるって着物だからこそできる事。それが断捨離で何も考えずに手放す事なのかな?ってちょっと立ち止まってもらうには十分な理由。ではないでしょうか。

それに、あつらえてくれた着物はサイズもあっていて、コーディネートもできているはずです。全部そろって着ることができる状態でそろっているので、着る事さえできれば、お金はかけずに着物を着れます。着物がよくなるタイミングがもしかしたら来るかもしれませんそのことについては【お家時間 5】断捨離注意報 1に書かせて頂いたのでよかったらこちらもご一読いただけたらと嬉しいです。

お持ちの着物は、ただそこにあるのではなくて、あなたの事を想っているからここにある。

そして着物には、ご両親やおじいちゃんおばあちゃんが幸せになって欲しくて用意した。自分は知らないけれど、お金や時間をかけて心を込めて選んでいる事に想いを馳せていただけないでしょうか。

そして、その想いを愛情をあたたかい気持ちとして心に置いてていただけないでしょうか。

着物は幸せのかたち

そうすると着物に向き合う時間やまた整理するときの気持ちや心情が違ってくると思います。

 

 

着物を生かす仕分け

 

振袖・留袖・訪問着+七五三・お宮参り着物

お宮参り・七五三・入学・卒業・結婚式・成人式など人生の大事な日を大切に過ごす着物はその大事な日に向けて一つ一つの準備していく必要があります。でもその時間こそが幸せを感じる時間、ご家族と一緒に準備してお話をしていく過程はあとで思い出になってゆく。だから準備は面倒な事ではなくて幸せの時間。大切な日は着物で過ごして頂きたいです。

ですので、着物の仕分けで考えると、大切な日を迎えるための着物は置いていて下さい。

  • 振袖
  • 留袖
  • 訪問着
  • 七五三
  • お宮参り

こんなカワイイ時の着物、置いてて上げた方がいいですよね。見てるだけで幸せですよね。

 

 

 

羽織るものコート類

振袖・留袖・訪問着+七五三・お宮参り着物は置いてて頂きます。気候やお天気によっては羽織るものがあった方が寒暖差に対応できるのでコート類も置いている方がよいです。

フォーマル着物の上に着るコート:道行コート・道中着コート

雨の日用:雨コート

 

 

普段着の着物

これが一番難しいと思います。基本的に着ないのに…とお考えの方に、普段着を置いてて下さいとお伝えするのは、ご負担になってしまう言葉ですよね。

それでもお願いしたいのは、処分する前に1回、2回、、、3回、ぜひ立ち止まって考えてください。着物はサイズもあっているはず、もしあってなくてもお直しや仕立て直しで復活させることもできます。そしてお洋服より着物の方がこれから良い感じにいられるという考え方もあります→(【お家時間  5】断捨離注意報 1 に書いてます)。お洋服で絹のものを着ることってまず少ない中、着物は基本絹です。着心地や肌当たり、色柄の美しさを楽しむ事ができます。

誂えてくださったものなら、似合うと思って着てお出かけして幸せな時間が過ごせると思ってご用意下さったものたちです。着る事さえできれば生かせる着物達であることを知ってください。そろっているならお金をかけなくても、毎年毎年、年齢を重ねても着続けられて幸せを感じ続けられるものである事も知って欲しいです。

 

その上で、普段着なのでご自身の好みに合わない。というアイテムはどうしてもあるかもしれません。年齢を重ねて着るのが難しいと感じる着物もあると思います。サイズが全然違うものがある(親戚の方やご両親の着物など受け継いだものなど)。それは整理して着ないものとして判断するのは仕方ないと思います。そこで判断するにはどうするか。できるだけ生かせる方法でご案内しますね。

 

 

紬や地味なお色の小紋の着物は残す候補

もしかしたら着物を着てみよう!と思って下さった時に置いてて欲しいものです。

紬というのは織りの着物、糸を先に染めて、その糸で織り上げて作られたもので、産地や技法によって生地の特徴が違って風合いも質感も色々で、普段着るのに大変コーディネートしやすいです。たとえば大島紬とか紺色で着心地もいい着物はぜひ着てみる方向で手に取ってみてください。

小紋の着物は、白色の生地に色々な技法で染めて絵付けしています。若い時に着るものは艶やかな色柄が多いですが、年齢を重ねるとちょっとお色は押さえたものが着やすいですね。

 

サイズが合わない

着付けで多少カバーすることができるので多少のサイズ違いは何とかなることもあります。

  • 気に入っている→部分的なお直し・お仕立て直しで着られるようになるかもしれない→ご相談下さい
  • 気に入ってない→ご提案:生地として生かすリメイク

 

あきらかにサイズが小さい

150㎝くらいなど大変小柄な方の着物は、仕立て直しで希望のサイズにできないケースが多いです。中にはお仕立て直しでサイズを変えることができるものもあるのですが、これは見てみないと判断が難しいのでご相談下さい。生地として生かすか、処分するか。になると思います。

 

色柄が派手

赤色やピンク色の着物で帯で引き締めてコーディネートしても難しいと思う着物

  • 染めて地味なお色めにして着られるかも→ご相談下さい
  • 気に入ってない→ご提案:生地として生かすリメイク

 

長襦袢

着物を着るなら必要なので置いてて欲しいです。中に着るものなので多少小さくても何とかなることが多いのでサイズもお直しや仕立て直しで対応しやすいです。枚数が多い場合は、好みのものを優先して残すようになさってはいかがでしょうか。

 

羽織

着物を着る時にコートとは違って、気軽に羽織れて、帯が見えるからお洒落も楽しめます。普段着にはぜひお持ちいただきたいです。それでも着れないものの判断があります。

  • 身丈(肩から裾までの長さ)が短い→今は長めが好まれるので短すぎると着にくいかもしれません。仕立て直しで着られることもありますが、生地の長さが足りないと仕立て直しをしても長さが出ない事があります。→気に入ってる羽織ならご相談下さい
  • 色柄が派手→昔は赤・ピンク・緑など華やかなお色が多いです。あまりに赤色・ピンク色が強いと着にくい事があります。気に入ってない場合はリメイクの方が向いている事があります。

羽織は仕立て直しをしたくても生地の長さが希望の丈まで出せない事が多いです。またお色柄も派手なものが着物より多い傾向にあります。そのため、気に入っている色柄と長さがあるものはぜひ置いていて頂きたいですが、気に入らない時は手のかけようが難しいので、リメイクなど生地として生かして頂くのがオススメです。

リメイクをオススメするのにはもう一つ理由があります。総絞りとか生地質の良いものが多いからです。コートにしている生地の多くはしっかりしてますし、総絞りなどかなり凝った技法のものもあります。柄の大きさも着物ほど大きい柄を使っていないので、リメイクしたときの柄のバランスが良いです。生地質・デザインともにとても素晴らしいので、リメイクという生かし方をぜひ前向きにご検討いただきたいです。

当店のリメイクサンプルも基本、羽織と道行コートで制作しました。生地がよくデザインがよいというのは実感としてあります。お店のリメイクサンプル写真です。

 

色柄も着物とのコーディネートで生かしやすいアイテムなので、多少派手なものも使える可能性があります。

 

 

 

 

ここからはサヨナラする判断、できるだけ生かして欲しいですが、管理や着物の状態など残せないものもあります

 

 

サヨナラするものの判断

基本的に気に入るものは残しておいてもらって、後々の判断でサイズなどお困りの事はぜひご相談いただけたらと思います。色々ご検討いただいた上で、それでも処分した方がいいと判断するものがあります

※高価だったとか想いがある場合は、一度ご相談頂いてから処分して頂くことをお勧めします

もしかしたら手をかけるとなんとか元通りに近い状態にできるかもしれないですし、その判断はプロが判断する範囲なのでご相談頂く方がよいです。その上でダメだったら仕方ないので心残りがなくていいかもしれません。

 

カビ・シミ・変色

これらは範囲が広いと直しようがない事や、何とかできてもお金がかなりかかるなど、生かすにも難易度が高すぎると感じるものです。見た目も匂いとかももう着るには…と一目瞭然だと思います。

カビ・シミ・変色が無い部分で気に入ってる刺繍部分や柄があったとしたら、そこだけ切って生地を残してもらって、あとは処分する事になります。

 

裏地の変色

裏地がうっすら全体が茶色になっているのは、絹の生地の特徴なので問題がないです。ただし点々と茶色のシミが出てるのはカビです。でも表の着物生地にカビがでてなければ裏地を処分してお仕立て直しで復活させることも可能なケースがあります。気に入ってる着物で残しておきたい場合は、生かせる可能性があるのでご相談下さい。

 

夏物の着物の汗ジミ・衿の変色

夏物の着物(裏地がついてない透け感のあるもの)は、お手入れがちゃんとされていないと汗をかいているので、その汗シミがそのまま残ってたりします。夏にワンピースを着て、洗わないでそのまま保管してたら脇にシミができてたみたいな感じでしょうか。これらの変色は、職人が直せる場合もありますが、範囲が広かったり生地のコンデションが悪いと難しい場合があります。

 

あまりに小さい・サイズが合わない・全然好みではない

上の項目でも書きました、サイズが合わないもので、生かしようが無いものは生地として生かして頂くかサヨナラする事になります。

 

 

 

 

着物を着物として使わないと判断したら

 

サヨナラする前に リメイクという方法を考えてみる

着物・帯ともに絹の生地。凝った色柄、職人の手仕事で作られたものはやっぱりそれだけの価値があります。手触りやデザインや生地の質感など、見た目に美しく、触っても素晴らしい。これを着るという日本人の美しい感性が素晴らしいのですが、なかなかその着る方向で生かせないのであれば、この美しさを普段に使える、手元に残しておくという方法が有効だと思いませんか。

また愛情いっぱいの着物・帯を形を変えてもそばに置いていられると考えるとプライスレスのアイテムでもあります。心通わすものが手元にあるのは、生きる力に支えになってくれると思っています。それだけの愛情が着物にあるからです。持ってるだけ気持ちを満たしてくれるからです。それはリメイクがオススメというお話以上に、愛情を感じられることに何よりも重きを置いてお伝えしたい事です。

 

だから当店では、着物を生かすお仕事を、リメイクというお仕事をはじめました。たくさんのお客様の愛情にあふれたお気持ちにふれてきたからこそお伝えしなければいけないと思っています。処分ではなくて、生かす事を選んで欲しいです。それは着る方法が一番ですが、どうしても、、というときの為のリメイクです。

 

 

大切な形見の羽織をリメイクでたくさんのアイテムに生まれ変わりました

いつもそばにいられる幸せを

大切な人を想う時間をお届けしたいと考えています

 

 

 

サヨナラする前に 誰かへ受け継いでもらう

サヨナラは最後。どうしてもサヨナラする着物達も、お知り合い、ご親戚、お友達など着物を着られる方に一度当たってみてください。着物に興味がなさそうな方にもお話してみると、知り合いの知り合いに着物を着る人がいるなど、意外と、本当に意外と誰かいてるものです。売ってしまうより、処分するよりも着物を着る方に渡してあげてください。着物は着物として生きる道が一番喜ばしいです。

 

 

 

サヨナラする前に 買取に出す時 後悔してほしくない

心がこもった愛情が形になった着物。生かす方法が浮かばなくて売って整理された方の経験をお聞きしています。売ってしまう時にみなさん、仕方ないとはいっても傷ついておられるように感じます。

どうしても買取に出すって市場の判断になるので愛情や気持ちが関係なくなってしまいます。市場に対しての価値でやり取りされるのは買取価格のシビアな面では仕方ないとは思っています。

でも買取してもらうという事は、ご両親やおじいちゃんおばあちゃんが、想いを込めてお金かけて時間もかけて用意した着物が一瞬にして“もの”扱いになります。(全部がそうではないと思いますが)二束三文、それに持って帰ってもらえないものもあったりした。というお話はみなさまもお聞きになった事があるかもしれません。それと私が悲しいなぁと思うのが「これ買いとっても売れへんしね」そいういった業者側の言葉はまさに市場価値であって、お持ちの方にとっても価値とは違う言葉になります。

誰が悪いわけでもない事ですが、大事にしてるものが思う言葉で思うように対応してもらえなかったらツライです。大切な人から受け継いだ着物はそういう価値で判断してしまうと傷つきませんか。

思うような扱いやお金にならなくても、引き返しがきかないで、そのまま着物は手放してしまったら、もう帰ってきません。

後悔が残ってしまうことになります。

 

それは避けて欲しいです。できる事があって本当は知っていれば価値が分かって生かせたかもしれないのに手放したらもう何もできないです。

 

もし、着物がそこにある意味を感じてもらえて知ってもらえてて持ち続けて着たり、リメイクしていたら、これから先も幸せを感じれたかもしれません、つらい時に支えてくれるかもしれません。アルバムを見るように思い出を触って感じられるかもしれません。そういった心を支えてくれるものがお手元にある心強さ。簡単に手放してよいものではないと思いませんか。

だから買取をご検討なさる前に、私がお聞きしてきた後悔をしないように立ち止まって考えてみて欲しいです。

 

 

 

断捨離ではなくて心をベースに考えてみる

断捨離は、ヨガの考え方がベースらしいですね。断行(だんぎょう)・捨行(しゃぎょう)・離行(りぎょう)。着物という言葉を愛情という言葉に変えたとき、愛情を絶つ・捨てる・離れる。という事になってしまいます。そう思うと断捨離という判断で着物を扱うのはちょっと違うって感じませんか。

着物は不要なものでしょうか。心や愛情を受け継ぐ大切な物ではないのでしょうか。という事に重きをおいて、その上で、着れる事、リメイクする事、処分するもの、処分するなら誰かに生かしてもらう事を検討して頂けたらというお話をさせて頂きました。買取って。ところも触れました。

大事にして頂きたいのは、想いです。着物は着物という形だけではないことに気がついてもらってその上で仕分けていきましょうと。生かしようがないものも中にはあるのでそれは仕方ないとして、考えられることをして後悔のない仕分けをして頂けたらと思っています。

長く書かせて頂きましたが、ご参考になりましたら嬉しいです。処分しようとお考えの方には、なかなか処分まで道のりが遠い内容で困ったかもしれませんが、それでも一旦お考えいただいて後悔のないように判断してもらえたら何よりです。

 


最後まで長文にお付き合いくださいまして本当に有難うございます。

当店はとても小さいお店ですし広告を出してないので発信力があるわけではありません。でも着物を生かしてほしい想いが強くあります。もしお困りでしたらぜひお声かけて下さい。生かせる方法を一緒に考えませんか。着物はきっと幸せな気持ちを感じさせてくれます。それだけの力があります。ご依頼頂くお客様の想いを生かせますようにお話ができたらと思います。